肉から出るドリップとは?
パックの中にたまっている赤い液体のことを「ドリップ」といいます。見た目や衛生面から敬遠されがちですが、正しい知識があれば過剰に心配する必要はありません。
ドリップが出る原因
ドリップは、お肉の組織液が流れ出たものです。お肉の細胞が傷ついたり、温度変化によって筋肉の繊維が収縮したりすると、細胞内部に保持されていた水分やたんぱく質、旨味成分などが外に染み出してしまいます。
加熱や冷凍・解凍、あるいは輸送中の振動などによって、肉の細胞が壊れるとドリップが出やすくなります
ドリップの色と種類
ドリップの色は赤っぽいものが多いですが、これは血ではなく「ミオグロビン」というたんぱく質によるものです。
ミオグロビンは酸素に触れると鮮やかな赤色になり、時間が経つにつれて酸素との結合が弱まると、少し暗い赤色や褐色に変化することもあります。
また、ドリップには透明に近い液体が見られることもあります。これは主に水分で、やはり旨味成分や栄養素が含まれています。
鮮やかな赤色なら品質には大きな問題はありませんが、黒ずんでいたり異臭がする場合は傷みが進んでいる可能性があります。
食中毒の原因にもなるので注意!
肉のドリップには栄養分が豊富に含まれているため、細菌が繁殖しやすい環境です。
特に常温で放置された肉から出るドリップには注意が必要で、食中毒の原因になることも。扱い方には十分な注意が求められます。
ドリップが出ているときの対処法
ドリップが出てしまったからといって肉が使えないわけではありません。簡単な対処で、おいしく安全に調理できます。
色の悪いドリップは捨ててふき取る

色が悪いドリップは、迷わず捨てましょう。キッチンペーパーを使って、お肉の表面についているドリップを優しく丁寧に拭き取ることが大切です。
これだけでも臭みや雑味をかなり防げます
また、この一手間を加えることで、お肉の雑味や臭みを抑え、調理後の仕上がりを良くすることができます。
ドリップが出ていたらお肉を洗ったほうが良い?
「ドリップが出ているなら、いっそ水で洗い流した方が清潔なのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、基本的にお肉を水で洗うことは推奨されていません。
水で洗うと、確かに表面のドリップは洗い流せますが、同時にお肉の旨味成分も流失しやすくなります。むしろ洗うことで水分が肉にしみ込み、味や食感を損ねることも。
これらのことを考慮しても、ふき取りだけで十分と言えます。
ドリップが出づらい状態で冷凍する方法
冷凍の仕方によって、ドリップの量は大きく変わります。適切な冷凍法で肉の鮮度を保ちましょう。
購入時のパックのまま冷凍しない

スーパーで購入した発泡トレーとラップのまま冷凍すると、隙間から空気が入りやすく、冷凍焼けやドリップの原因になります。
購入後はパックからお肉を取り出し、必ずラップでしっかり包み、保存袋に入れて密閉しましょう。
肉の表面をふき取って保存
冷凍する前にも、お肉の表面についている水分やドリップをキッチンペーパーでしっかりと拭き取りましょう。
余分な水分は、冷凍時に大きな氷の結晶を作りやすく、細胞を傷つける原因となります。
このひと手間が、解凍時のドリップ量を左右する重要なポイントです。
解凍後は再冷凍しない
一度解凍したお肉を再び冷凍する「再冷凍」は、品質を著しく損なうため絶対に避けましょう。
解凍時にドリップとして流れ出た水分や旨味は元に戻りませんし、再冷凍することでさらに細胞が傷つき、ドリップの量も増えてしまいます。
また、解凍と冷凍を繰り返すことで細菌が繁殖しやすくなるリスクも高まります。使う分だけを解凍し、解凍したお肉はその日のうちに使い切るようにしましょう。
解凍する時にドリップを抑えるコツ
冷凍したお肉を美味しく食べるためには、解凍方法も非常に重要です。ドリップを最小限に抑える解凍のコツをマスターしましょう。できるだけゆっくりとした温度変化がカギです。
時間をかけて冷蔵庫でゆっくり解凍

肉の解凍は急激な温度変化を避け、時間をかけてゆっくりと行うのが基本です。そのため最もおすすめな解凍方法は、冷蔵庫内での解凍です。
時間はかかりますが(ブロック肉なら一晩以上)、低温でゆっくりと解凍されるため、ドリップの流出を最小限に抑え、お肉の品質を保つことができます。
温度変化が緩やかであるほど、氷の結晶が溶ける際に細胞へのダメージが少なく、ドリップの流出を抑えることができます。
時間がない場合は氷水解凍がおすすめ
もう少し早く解凍したい場合は、流水解凍や氷水解凍も有効です。
冷凍したお肉をビニール袋などに入れて空気を抜き、大きいボウルに入れた氷水に浸して解凍します。
水は空気よりも熱伝導率が高いため、冷蔵庫解凍よりも早く、低温を保ちながら解凍することができます。
より早く解凍したいなら流水解凍
氷水解凍よりももっと早く解凍できるのが流水解凍です。
氷水解凍と同じように冷凍したお肉をビニール袋などに入れ、大きいボウルに水をはり、流水を流しいれて放置しておけば解凍できます。
氷水よりも早く解凍できますが、ドリップが出やすくなるため、本当に時間がない時や急ぐ時のみ利用しましょう。
室温で常温解凍しないこと
常温解凍は中心まで解凍される前に表面に菌が繁殖しやすくなり、食中毒の原因になることも。そのためお肉を室温で放置して解凍するのは基本的にNGです。
また、室温ではお肉の表面温度だけが急激に上昇し、中心部は凍ったままという状態になりがちです。
この温度差がドリップを大量に出す原因となるだけでなく、表面では細菌が繁殖しやすい温度帯(10℃~60℃)に長時間さらされることになり、食中毒のリスクも高まります。
特に夏場など気温が高い時期の常温解凍は非常に危険なので、避けておきましょう。
ドリップが出やすい肉の種類
肉の種類によって、ドリップの出やすさにも差があります。購入時の参考にしましょう。
牛・豚・鶏でドリップの量は違う

一般的に、鶏肉は牛肉や豚肉に比べてドリップが出やすい傾向があると言われています。これは、鶏肉の筋繊維が比較的細かく、保水力がやや弱いためと考えられます。
また、ひき肉は表面積が大きいため、空気に触れる部分が多く、細胞も断ち切られているためドリップが出やすい傾向があります。
ただし、これはあくまで一般的な傾向であり、お肉の部位や鮮度、処理方法によってもドリップの量は大きく変わってきます。
新鮮で質の良いお肉を選び、適切な方法で保存・解凍することが、どんな種類のお肉でもドリップを抑えるためのポイントです。
ドリップ量を抑えて調理する方法
下処理や解凍だけでなく、調理の段階でもドリップを抑えるための工夫ができます。ちょっとしたコツで、お肉料理が格段に美味しくなります。
冷凍した肉は芯までしっかり解凍

冷凍肉を調理する際は、必ず芯まで完全に解凍してから加熱しましょう。
焼く直前に表面だけが解凍されていると、加熱時にドリップが急激に出てしまいがちです。また、外側だけが先に焼けてしまい、中まで火が通るのに時間がかかります。
その結果、加熱しすぎで硬くなったり、逆に加熱不足で食中毒のリスクが生じたりするだけでなく、解凍が不十分な部分からドリップが流れ出しやすくなります。
調理を始める前に、お肉が均一に解凍されているかを確認しておきましょう。
塩は焼く直前に振る

下味をつける際の塩コショウは、食べる直前に振りましょう。塩には浸透圧の作用があり、お肉の水分を引き出す働きがあるためです。
調理のかなり前に塩を振ってしまうと、焼くまでに余分な水分(ドリップ)が出てしまうことがあります。
ステーキやソテーなどの焼き物の場合、塩は焼く直前に。これによってお肉の表面の水分が適度に抜け、焼き色がつきやすくなる効果も期待できます。
まとめ
お肉から出るドリップは、見た目や衛生面で気になる存在ですが、その正体や適切な対処法を知ることで、より美味しく安全にお肉料理を楽しむことができます。
ドリップを最小限に抑えるためには、
・購入時:ドリップが少ない新鮮な肉を選ぶ
・冷凍時:水分を拭き取り、急速冷凍する
・解凍時: 冷蔵庫でゆっくり解凍する
・調理時:完全に解凍し、塩は直前に振る
これらを抑えておきましょう。安心して美味しい肉料理を楽しむためにも、ぜひ今回紹介したポイントを実践してみてください。
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