さて、今回は、醤油の地域性についてお話していきたいと思います。みなさんもご存知の通り、日本列島は、周囲をぐるっと海に囲まれ、南北に長いので、一言で「和食」といってもその味付けはさまざま。醤油は、基本的には「しょっぱい」ものですが、実は、地域によっては甘かったり、醤油の味の違いを知ると、地域の成り立ちや文化を知るきっかけにもなるんですよ。
醤油の生産量トップは千葉県!
日本の醤油の生産量トップは、どこかご存知ですか?正解は、断トツで千葉県!千葉県には、キッコーマン、ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油など有名メーカーが集まっているのですが、醤油の大きな産地に欠かせないのが物流との関係です。物流といっても車のない時代、液体である醤油を運ぶのは、それはもう大変だったはずです。人が背負って山を越えるのは一苦労。そこで欠かせないのが水運です。原材料である大豆や小麦を船で運んできて、それを加工してまた船に乗せて消費地へ運んでいく。
千葉県の場合は、江戸川や利根川で江戸まで運ぶことができたので産地として発展できたのだと思います。そのため、醤油メーカーの工場は川に面していることが多く専用の船着き場の名残が残っていたりもします。
だし文化と醤油。西日本では淡口醤油と濃口醤油を使い分ける
醤油は、だしをつかう日本の食文化と切っても切れない存在です。その土地で使うだしにあわせて醤油も進化を遂げていきました。
関西のうどんつゆはだしがベースで、見た目にも淡い色ですよね。関東のうどんはつゆが真っ黒で驚いたなんて印象を持たれる方も多いかもしれません。昆布だしがベースの西日本では、煮物やお吸い物など調理には淡口醤油で、お刺身などかける時には濃口醤油を使い分けることが多そうです。一方で、かつおだしがベースの東日本では、醤油を用途によって使い分けるよりも濃口醤油1本で、何でも使うという感覚が多いと思います。
海沿いは甘く、内陸はしょっぱい?地域で異なる醤油の塩加減
「九州の醤油は甘い」そんな話を耳にしたことってありませんか?九州では、定番の醤油が甘く、南にいくほど甘さが強くなり宮崎県の南の地域や鹿児島県は特に甘いんですよ。全国各地の醤油蔵を回ってみてわかったのですが、甘い醤油は九州だけじゃないんです。九州以外でも、甘い醤油が好まれる地域は意外と多く、日本海側の地域では甘い醤油が好まれているように感じています。日本海側沿いの中で比べると、能登半島の先端の輪島のあたりは特に甘い醤油だと思います。はっきりと境界線が引けるわけではないのですが、四国、中国、北陸、東北地方は甘い醤油が流通していて、特に海沿いの地域は甘さが強く、内陸はしょっぱい醤油が好まれるなんて話もあります。海で仕事をしていると甘みを求めることや、獲れた魚が新鮮で身もしっかりしているので醤油をはじいてしまう。そのため、より醤油の味わいを強くしたりとろみを付けたりした醤油が好まれます。逆に、山仕事でたくさん汗をかいた後はしょっぱいものの方がおいしく感じるから、内陸では塩味の強い醤油が好まれるなどという話もあるんですよ。
独特の存在感をはなつ中部地方「発酵のテーマパーク」
中部地方には、醤油、八丁味噌などの豆味噌、三河のみりん、酢、日本酒。たくさんの種類の発酵がぎゅっと凝縮されています。発酵という視点で見ると、バラエティーが豊かすぎる地域です。
このエリアには、熟成期間が長くうま味にあふれる濃いめの溜醤油と淡口醤油よりさらに色が淡くあっさりした白醤油の両極端な醤油の生産地が集中しています。この独特の食文化の中心にあるのが、豆味噌なのだろうなと感じています。豆味噌は、大豆が主原料のうま味が強い味噌です。中部地方の名物「味噌カツ」や「どて煮」など、料理全体が濃いめの味に慣れていくと、普通の醤油の味付けでは物足りなく感じてしまうのでしょうね。そして、濃い溜醤油が浸透するほどに、なんでも濃くなってしまうということで対極にあるような白醤油がでてきたという。なかなかにおもしろいエリアです。
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※本記事はにほんものストアにて2021年2月8日に公開された記事の転載です。記事の内容は掲載当時の情報です。