塩で食べると食材本来の味わいがわかる
刺身は醤油で食べるのが当たり前だと思っていませんか?実は、醤油が庶民の食卓に登場するようになったのは、江戸時代中期になってから。それまでは海水を塩ができあがる直前まで濃縮した「水塩」や、日本酒に梅干しと鰹節と塩を合わせて煮詰めた「煎り酒」が、刺身に合わせる調味料として一般的に使われていました。

醤油には約300種類を越える香り成分が含まれていると言われ、グルタミン酸を多く含むため濃厚なうまみもあり、醤油を使うことで刺身に華やかさとうまみを加えてくれます。
塩には基本的に香りがありませんし、塩そのものに醤油ほどの濃厚なうまみはありません。しかし、塩は食材が持つ本来の味わいをさまざまな方向から引き出し、余すところなく食材の性格そのものを楽しむことができます。Aという塩を使えば魚に含まれる甘味にスポットライトが当たり、特徴の異なるBという塩で食べるとうまみにスポットライトが当たる、という具合です。それ以外にも、「このタコはほのかにイカの味がする」なんていう、食べたエサの特徴まで気がつくことができます。
醤油で食べる刺身はもちろん美味しいのですが、まずは塩だけで食べてみませんか?魚本来の味わいをしっかり知ってから醤油を使ったほうが、おいしさの幅が広がり、食卓がより楽しくなりますよ。
赤身の魚と白身の魚に合う塩は違う
これまでのコラムでもご紹介したように、赤身と白身では相性が良い塩が違うのは、魚介類も肉も同じです。
カツオやマグロなどの赤身の魚はミオグロビン(鉄分)を多く含むため、同じく鉄分を多く含む塩が相性が良い傾向がありますし、タイやハマチなどの白身の魚にはわずかながら苦味が含まれていることが多いので、塩もほのかに苦味のある塩がおすすめです。また、赤身のほうが白身よりも味が濃厚で余韻も長く続くため、赤身には少ししょっぱさが強い塩が、白身の魚にはしょっぱさがまろやかな塩が合いやすいと言えます。
脂がのっているかどうか、油を使うかどうかもポイント

塩選びには、脂(油)が重要なポイントになります。たとえばマグロでは、部位によって大トロ、中トロ、赤身と分かれます。脂がのっている部位は、しょっぱさがさらに強めのものでないと塩が魚の脂を受け止めきれず、不必要に塩の使用量を増やすことになってしまいます。また、オリーブオイルやごま油と合わせて食べる時などは、油が加わった分、塩にも力強いしょっぱさが必要になります。オリーブオイルと合わせてカルパッチョにしたり、ごま油と合わせて韓国風に仕上げるような料理の際には、塩選びに注意すると、よりおいしくなります。
刺身は鮮度の良いもので
刺身を塩で食べる時に重要になるのは、なにより鮮度です。鮮度の落ちた魚には生臭さが隠れているため、塩で食べるとその生臭さも引き立ってしまうことがあります。鮮度が落ちて締まった刺身は、全体にべたっと塩を塗って塩漬けにして置いて、余分な水分とともに生臭みを吸い出してからさっと水洗いして、「魚の生ハム」のようにして食べるという手段もあります
めいぶつチョイスで買える調味料・油の商品一覧を見る
※本記事はにほんものストアにて2022年1月6日に公開された記事の転載です。記事の内容は掲載当時の情報です。